海外視察2008 KCTS9

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 アメリカは日本に先駆け、2009年2月17日に地上デジタル放送に完全移行します。私たちは、日本より2年以上も早くデジタル化に移行するアメリカのテレビ局KCTS9の現状を把握すべく視察を行いました。


○KCTS9について
 KCTS9はワシントン州シアトルに本拠地を構えるPBS(公共放送サービス)で、1954年に放送を開始した。現在の視聴者は約100万~200万人で、PBSの中でもとても大きな組織である。国境が近いため、カナダ全土にもケーブルテレビで放送を行っている。
運営経費の74%を視聴者の寄付で賄っているが、寄付金を募るために、一定の額以上の寄付者にはDVDをプレゼントするなどの対策も行っている。残りは、財団やスポンサーなどからの寄付で賄われている。
 地上デジタル放送への移行に必要な経費に対し、デジタル化を強制・命令している政府からの援助は一切なく、約2500万ドルの経費はそれぞれのテレビ局が負担しなければならない。KCTS9では、その2500万ドルのうちの半分を超える1100万ドルという多額の寄付をマイクロソフトから、彼らがコンピューターで使えるフォーマットでプログラムを制作、あるいは収録するという条件で受けている。
他の小さな局は、寄付も受けることが出来ず、運営できなくなってしまうのではないかという話もある。だが、1100万ドルの寄付を受けたKCTS9でさえ、地上デジタル化に伴い財政状況は厳しくなったと言わざるを得ない。
 これは、社員の数にも影響を与えている。以前は150人ほど社員が働いていたが、現在85人まで削減され、社員の倍以上である175人ほどのボランティアに頼っている。自局で制作している番組も徐々に減少し、現在は2番組のみであり、その他の番組は他局から購入するに留まっていることからも容易に想像することが出来る。
○アメリカの地上デジタル放送に伴う現在の状況
 地上デジタル化を来年の2月に控えたアメリカだが、まだ一般の人々がきちんとデジタル化を認識していない、理解していないということが現状である。そのため、放送中にスポットで促すと共に、Webサイトでも説明をしている。一般の視聴者は、日本と同じように、地デジに切り替えるか、チューナーを購入する必要がある。
 これに対しアメリカ政府は、各家庭に40ドルのリベートを提供している。これにより一家族あたり2個までチューナーを買うことが出来る。しかし実際には、混乱が起き、放送局側が対応しなければならないことが予想されている。
 今回KCTS9への視察を行い、質疑応答を繰り返すことで、経営の成り立ちが厳しい地方局の状況を生々しく伺い知ることが出来た。こうした地上デジタル放送への移行に伴う地方局の問題は、日本でも言えることである。さらに、一般の視聴者の混乱など、まだまだ日本同様、問題が山積みである。こうした状況の中、先行するアメリカが来年2月どのような変化を迎えるのか注目していきたい。
文責 井出 麻里江