第1回 Sony 橋本勝憲氏

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ICカードとしてなじみの深いスイカ。駅で定期としてだけではなく、電子マネーの要素も加えられ、今後利用価値が増大していくことが予想されます。 そのシステムの基盤であるFelicaを開発されたSonyの橋本氏をお招きして、「電子カードについて」ご講演を頂きました。
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SONY
Sonyブロードバンドディストリビューション開発部統括部長 橋本氏をお招きして、ご講演を頂きました。 題目は「電子カードについて」です。
現在橋本氏は、動画コンテンツのブロードバンド配信のアーキテクチャーを開発している部署で働いていらっしゃいます。
以前、コンタクトレスICカード(非接触カード)の開発部署で事業推進部長をされており、今回はICカードについての貴重なお話を伺うことができました。
今回はこのコンタクトレスICカードのビジネスストラテジーについての話です。
 
○導入事例
この非接触カードの導入事例として、最近JR線を利用する際によく見かけるSuicaというカードがある。これはソニーのFericaカードをベースにしており、そして唯一、ソニーのブランドがついていない商品だ。
まずこのスイカカードは何のために導入されたのだろうか。それは、以下の問題の解決の為である。
◇改札の高速多情報処理化
JR山手線ではラッシュ時、本数の割合に対してゲートが少ない為、ゲートを通過するのに時間が掛かる。通常のペットカード(定期券)は一人1秒の時間を費やすが、スイカを導入することにより、カードの処理速度としては、0.1秒~0.2秒で処理できる。つまり、改札の混雑を解消することが出来るのである。
◇改札機メンテナンスの省力化、コストダウン
スイカはかざすだけでゲートが開くため、磨耗することがなく改札の故障が少ない。そのための特別なメンテナンスも少ない。
◇乗車券の取り違いによる紛失の防止
◇新規サービスの追加導入が可能
◇不正乗車および不正乗車券の作成防止
○カードの種類と応用分野
従来のカード 印刷のみ 会員カードなど
磁気ストライプ+エンボス※ クレジットカード、銀行のキャッシュカードなど。
75バイトで処理している為、現行の銀行カード・クレジットカードの偽造が比較的簡単である。
全面磁気 イオカード、テレホンカード、定期券など。
これについても、構造上、偽造が比較的簡単。
ICカード(ICがカードの中に埋め込まれている)
接触型IC クレジットカードがこれに変わろうとしている。
これはリーダーライターに差し込むことによって使うことができる。
非接触型IC スイカなど。かざすだけで使うことができる。
今後は・・・
非接触型IC+磁気ストライプ+エンボス
接触型+非接触型IC
※エンボス=おうとつがある事をいう。
○ソニーの非接触ICカード Felica
 非接触ICカードとは、ゲートから13.56MHzの電波を常に放出し、そこにカードを近づけるとカードはアンテナで電磁波を受け、ICカード内に電気を流して駆動させる。
バッテリーをアンテナから供給させ駆動させているため、スイカは半永久的に使う事が出来る。
○”Felica”の特徴
1.高速CPUを内蔵し高いセキュリティを実現
非常にセキュリティが高く、偽造が難しい。スイカの限度額は、2万円に設定されている。その2万円のバリューを作るために、もし、偽造しようと考えた場合、技術解析と合わせて、数億の投資が必要になるであろう。商業的な観点からも偽造は難しいと考えられる。
2.Felica OSにより複数の事業者がアクセス権の設定可能
これはこのFelicaカードを導入するうえでの一番の根本的な問題。
複数の業者がこのカードを導入し、共有することが可能である反面、
例えば、現在JRだけがスイカを入れているが、地下鉄がこのカードを導入した場合、どちらの会社がそのカードを発行するか、ということが一番の問題になってくる。
JRと私鉄の乗り継ぎの際、どちらの会社が発行した定期を買うのか。
売った段階で、お金が入ってくる。最初にキャッシュが入ってくるということが、この業者の間では重要な問題の一つと考えられている。
3.業界最高速の処理スピードを実現
Felicaを開発する最大のテーマが処理スピードだった。
4.非接触ICカードで画期的な低コストを実現
○その他のFelica導入事例
1.香港(1200万枚の出荷)
アクティブユーザーカードは、900万枚。香港の人口は約670万人なのに何故カードの方が上回っているのか?  それは、観光客もこのカードを買うことも一つの要因と考えられる。。 カードは空港で手に入れることができ、価格は50香港ドル(1香港ドル=15円換算で、日本円にして750円)である。
2.シンガポール
3.中国シンセン
4.東京モノレール、東急世田谷線、札幌営地下鉄 等の鉄道
5.長崎県バス共通カード、
6.北九州市営バス、山梨交通 等
7.ゲートシティー大崎
8.電子マネー Edy
ソニーは、カードを売ってもなかなか儲からない。1人500円の価値。そして半永久的に使えるので、ビジネスボリュームもあまりない。そこでソニーはカードを使って電子マネー事業をはじめた。
○ JRはソニーのお客でありながらライバルである?
今後スイカで買い物が出来るようになる。おそらく駅の構内の売店で使えるようになるだろう。
○ VIEWカードとスイカカードの違い。
クレジットカードは現金が入っておらず、サインをして後で請求書にて決済する。匿名性が低い。対して、スイカの特徴は、匿名性があることである。ところが、スイカを落としたら他人に使われる可能性が高い。利便性と匿名性は、相反する課題でもある。
JRのスイカの多目的用途とは、JRスイカの目的駅の構内で小額課金決済をすることである。今後、JRとしては郊外でも買い物をさせたいという計画がある。しかしその場合の市場は誰が握るのかが今後の重要な戦略になってくる。
さらに、クレジットカードに電子マネー機能を持たせれば高額な買い物もできるようになるだろう。そして、携帯電話にカードを埋め込んで使えるようになるということも、近いうちに実現できるようになるだろう。
先ほども述べたが、ソニーは電子マネー事業へと移行した。それがEdyである。
ampm全店+PRONT等で、今Edyを使うことができる。ampmで会員を獲得しようという目的である。 オフィス街のコンビニはお昼時に、非常に混雑するため、電子マネーによる、コンビニでの決済待ち時間を解消させようという考えだ。さらに、現金がレジに無いと強盗が入らない。現金の回収作業がないというメリットがある。
ソニー自体にも、こういった制度を取り入れようと、ソニー社員証システム(フェリカ)を利用できるようにしている。ソニーの社員は入退出、勤怠管理、食堂、身分証明書のため常に身に付けている。こういったカードの利用方法は香港でも導入されている。
○ 世界ではどうなっているか
海外の交通機関では、さほで処理スピードを必要としていない地域もある。例えば地下鉄などは日本ほど混雑しないからである。混む地域がこのカードを必要としている。そのため、やはり交通手段の少なく、人口密度の高い東南アジアでの需要が高まっている。
香港は進んでいて、現在マーケットは日本より大きい。香港にはオクトパス・カードというものがあるが、公衆電話がかけられるなど、カードの使い方が日本よりずっとひろい。
日本は、あらゆるところに規制があることも一因である。例えばJRが、スイカで駅の構外で客に買い物をさせようとすると、スイカの発行の金額の1/2を財務局に預けなければならない。これはプリペイド法があるためである。プリペイドマネーは先にお金をもらって預かった価値の利用を利用者に与えていることから、発行体が倒産したら使えなくなる。そのため、発行残高の1/2を供託しなければならないのである(保証のため)。
香港でのオクトパス・カードは、普及香港の市街地の鉄道・地下鉄・バス・ライトレール(簡易鉄道)・フェリー共通の5社共通のための発行であった。これが普及したため、用途が広めていけた。
また、シンガポールでもこういったカードの使い方がされている。
例えばホテルに泊まる際、ホテルのカード式ルームキーにお金が入っている。食事をする時もタクシーに乗る時もこのカードで行うことが出来る。海外に行ったとき、本来ならお金を両替しなければならないが、カードにお金が入るということは、カードを決済する際、クレジットカードならYenで決済が出来る。
つまり手元にシンガポールドルが無くても生活や旅行が出来るため、小銭を余らせる必要がなくなる。この戦略でシンガポールは外国の客を呼び寄せようとしている。
○ ソニーはICカードで何をめざしているのか?
ICカードで、個人認証、電子決済電子チケットを作って行きたい。リアルワールド(日常空間)でカードがあれば買い物ができるようにしていきたい。バーチャルワールド(インターネット上での買い物の決済印として)でも使えるようにしていきたい。
○ 便利な非接触型ICカードでも不便な点
ICチップにチャージした金額が少なくなった時には専用の端末を探して補充しなければならない。
そこで、PDA(携帯情報端末)をつかって通信回線でカードに電子マネーを補充することを考えている。
これは携帯端末にカードを差込み、カードセンターにアクセスし、ICカードに希望の金額を補充するという方法である。このお金のやり取りにはクレジットカード会社が間に入ることを想定している。
こうした実験は非接触型ICカードでは世界初の試みである。
しかし、こうするとカードがいるかいらないかという問題があがってくる。つまり携帯電話に直接電子マネー機能を持たせればいいのではないか、という意見も上がっているのである。しかしソニーはカードによる電子マネーを作りたい。携帯電話会社としては携帯電話でやりたい・・・。
ここは重要な課題となっている。
また、カードに携帯電話にあらゆるものを入れて怖くないか、という人間的な問題が残っている。あらゆる価値のあるものを入れ、さらにお金が入っている。そういう生活はどうなのだろうか。
利便性と人間の感性の行き違いは最後まで残る問題となっている。
○ まとめとして
ものがあったら市場ができるか?そうではない。マーケットだけみても新しい文化ができるとは限らない。
ソニーのICカードはプリペイドマネーである。
企業は利益を追うものであり、これだけでは利益にはならない。カードを使って何をやるかというアプリケーションを考えなければならないのである。
アプリケーションとしては、ICカードのプリペイドマネーが一番良いのではないか。
それをもつことによって利便性は何があるかを明確にしなければならない。
交通手段乗車券なら処理速度であったり、プリペイドマネーだったらお金を持たず生活が出来るという、キャッシュレス生活であったり。もし、この事業を唯我独尊でソニーだけがやったとしても普及は難しいだろう。
強力なパートナーと組めば…、人々の日常生活を変えることが出来るかもしれない。
例えばそれは携帯電話会社だったり、金融機関だったり、テレビ局、広報、広告、新聞記事だったりと、カードのアプリケーションは魅力ある組み合わせは多種多様である。
マイレージカードというものがある。これはクレジットカードで買い物をすれば飛行機のマイルがたまるというサービスである。お客を呼ぶためのロイヤリティサービスなのだ。
バンクオブANAのバンク=Edy
カードだけのビジネスはなかなか成り立たない。どういった組み合わせで付加価値をつけるかが企業の重要な戦略になってくる。
その商品を持つことによって新しいライフスタイルが生まれる。
そういう付加価値が生まれるというのがソニーの商品戦略の根本なのである。
文責 橋口・鈴木(雄)